ほっぺた落ちる

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【ドイツ語】ムッキーブーデで筋力ムキムキ

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辞書にない言葉を身につけるのは、誤解することも多い。

 

ドイツの俗語で Mukibude ムッキーブーデという言葉がある。初めてナツさんから「今日はムッキーブーデしてくるから遅くなるよ」と言われたとき、思わずムカデを連想した。

 

今日はムカデしてくる。なんとも生々しいイメージが浮かんだ。でもすこし落ち着きたい。ナツさんは遅くなると言っている。どうもムカデじゃないらしい。一瞬、黙りこんだ。

 

分からないことは聞く。そういえば語学学校では分からない単語を先生が話すと、クラスメイト達は必ず聞いていた。その様子を見て、最初は辞書で調べればいいのにと思ったものだった。今は、辞書も大事だけど、聞けるなら聞くのが良いと思っている。なぜって言葉は文化と密接につながってきて、辞書だと言葉の意味するところがつかみきれないことがあるからだ。

 

と、もっともらしいことを並べてみたけれど、ムッキーブーデに関しては、私のイメージはつかみきれないどころか、明らかに間違えている。綴りを聞いたものの辞書には載っておらず、けっきょくナツさんに教えてもらった。

 

ムッキーブーデは筋力トレーニングの俗語だった。Muki ムッキというのは筋力ムキムキな人を指し、Bude ブーデは小屋を意味している。

 

ナツさんはにやりとしながら、日本語表現「筋力ムキムキ」はドイツ語からきているんだと言った。「本当?」と聞き返したら、「いや、知らない。適当」と返されたので、このムッキー由来説はたぶん嘘なのだけれど、たしかにそう考えると記憶に残りやすい。

 

このムッキーブーデ、「ムッキは筋力ムキムキな人、ブーデは小屋」と知るまで、どうしても最初の「ムカデ」のイメージがつきまとって、四苦八苦した。私の頭の中もようやく更新されて、今では正確に、筋力ムキムキな人が部屋でトレーニングする様子をイメージすることができる。覚えてしまえば、この言葉は音の感触が楽しい。

 

ドイツではずいぶん落ち着いてきたとはいえ、まだコロナ前と同じ生活とは言えない。カフェの入り口には消毒液が置かれ、スーパーにはマスクを着用して入らなければならない。

 

ナツさんのムッキーブーデもまだ再開されていない。未知のウィルスとの格闘が続いている。「今日ムッキーブーデしてくる」という言葉を何の抵抗もなく言える日が、また来ますように。